キミ限定



みんなとても明るくてノリの良い人たちみたいで、あたしの周りで途切れることなく会話が繰り広げられている。



それを黙って見物していると隣に座っていた人に声を掛けられた。



「何か飲む?はい、これメニュー」

「あ、ありがとうございます」




明るめの茶髪に耳にピアス。


なんだかすごく軽そうなその人はケンというらしい。




あたしはメニューを受け取り目を通すけれど、聞きなれない名前の飲み物ばかりで迷ってしまっていた。




「えーと、じゃあそのケンくんが飲んでるのと同じやつ」

「分かった。これ超美味いからオススメだよ」




すかさず店員さんにオーダーしてくれるケンくん。

気遣いが出来て、優しくて。

軽そうだけど、見た目で判断するのはあんまり良くないなと思った。



「どう?」

「美味しい」



運ばれてきたジュースはほんのりピーチの味がして甘くてすごく美味しかった。



それから会話も弾んで、ケンさんにダーツに誘われて、あたし達は席を立った。



「え」

「どうしたの?」

「ううん、なんでもない」



立ち上がった瞬間視界が揺らぐ。


なんだろう。今一瞬、立ちくらみがしたような。

気のせいかな。


きっと気のせいだ。あたしは大して気にも留めず、ダーツへ向かった。






だけどそれからだった。


優しかったケンくんに大して違和感を持ち始めたのは。