キミ限定



あっという間に土曜はやってきて、その間あたしと伊緒が会うことは一度もなかった。



バッチリお洒落して、鏡で身なりを確認すると何だか無性に虚しくなった。



メイクも髪も、こんなに頑張ったって好きな人に見てもらえなくちゃ意味ないのに。



考えてみれば初めてだ。3日も伊緒と顔を合わせないなんて。



メールすらないし。



あたしはもう伊緒のことが本当に分からなくなっていた。









「おー、結芽。こっちこっち」



お店の場所が分からないと言うと近くの駅で葵が待ってくれていた。



「ごめんー!あれ、他の人は?」

「良いって。先に店に向かってもらったから。結芽って案外方向オンチなんだな」

「そうなのー!いっつも伊緒に任せっきりだったからって、今のなし!行こ、葵」




まただ。また無意識に伊緒のこと考えてた。



今日は全部忘れて楽しむって決めたんだもん。



伊緒の話はしない。