まるで、返事を返すように、ふわふわと揺れるポピーは、あの日と何も変わらない。


公園の時計は、16時を差している。


「あれ……」


あの日も、こんな夕暮れの朱が強い時間だった気がする。

いつもと変わらないはずの日常に現れた、太陽。



『お、俺っ!!松島 颯って言います!!』


照れて赤くなった頬と、真っ直ぐな目と、誠実な言葉を今でも昨日の事みたいに思い出せる。



あの時、静かに、そして噛み締めるように伝えられた。

つい数秒前まで顔も知らなかった、颯から衝撃の一言。


そして、バサッと目の前にポピーの花束を差し出して、颯はこう言ったんだ。


『結婚してください』


「結婚してください」


「えっ……?」


後ろから声をかけられて、まるであの日に戻ったかのような錯覚をする。


振り返ると、笑いながら、私に歩み寄る颯がいた。