「俺は、ずっと花音だけを見てる。今は、ケジメつけるまで、気持ちを伝えるのは、卑怯だと思ってるから……」


そう言って、颯は私に背中を向けた。

それが、あの時……大会で負けた時、颯が控え室に去っていく悲しい背中と被って見えた。


「待っててほしい、そんで見届けて、花音」


そう言って、歩き出して遠ざかる颯の背中。

なのに、あの時みたいな絶望は無い。


私たちの未来の為に歩き出したんだと、分かってるから。

颯、あなたを見つめ続ける。

だからね………なんて言ったらいいのかな……。



すると、ふとワスレナグサの花言葉を思い出した。

『私を忘れないで』……そうだ、この言葉がぴったり当てはまった。

私はずっと、颯を想ってるから……。