「例えるなら渋い歯磨き粉、いや、無駄にスースーするお茶……?」

とにかく、今回の新作は完全にアウトだ。奇抜なアイディアに期待していたのに、誰がこのドリンクの販売許可を下ろしたのか、訴えてやりたい気分になった。

ちょっぴりどんよりしながら、行き交う人の波に追い越されながら、道を歩く。さっきまでの高揚感はどこへやら、テンションはガタ落ちだった。

「はぁぁー、責任とってよね……」

──こんな時に彼氏がいてくれたら。

このゲロマズマキアートも美味しく感じるのかなぁ。なんて、愚痴を零しながらトボトボと宛もなく歩く。

すると、ふいに人の気配が消えた。あんなに聞こえていたはずの誰かの話し声、車のエンジン音、とにかく雑音が無い事に気づく。

「あ、あれ……ここどこ?」

ハッとして周りを見渡せば、都会にはふさわしくないこじんまりとした路地。その道は薄暗く、真っすぐどこかに続いている。

「行ってみよう」

不気味だったが、ほとんど無意識に足を踏み出していた。