それでも、今は何一つとして拓海を許せる 物証にはなりえなかった。 【ひもなんだ】 たとえそれが冗談であったとしても、 今のじーには笑って返してあげられる余裕など一つもなかった。 「別れよう」 やがて やけに尖った冷たい空気の中で じーの唇だけがゆっくり動いた。 拓海は眼をうっすら血走らせたまま、 躊躇いがちに部屋を後にした。