「梨々華ちゃん!私も一緒に帰りたいなっ」


思わず、握っている鞄に力が入る。


「ごめんね、用事あるから……」


嘘なんかついて最低だ。


「そっか……気にしないで!明日ね、バイバイ!」


まだ由花は山田先生と居るの?


手当なんて、とっくに終わったはずでしょ……?


今の私にはコントロールも効かず、由花を悪者にしか変換できない。


「……バイバイ」


後ろから、二人の楽しそうな声が耳に嫌でも入ってしまう。


由花は悪くないのに、ひとりで妬いたりして馬鹿じゃないの……?


保健室のドアを開ける手が震えた。


二人だけ残して、帰る自分が苦しかったから……。


でも帰ると言ったんだ。


もうここから後には戻れない。


「梨々華ー気をつけて帰るんだぞ」

「……分かってます」


なんで先生は、そんなに最後まで優しいの?


先生を想うと愛おしくて愛おしくて、胸が苦しくなるよ。


若いのに人のこと理解して尊敬します……。