今や、『何かあった時』僕の心の拠り所は、そこしかなかった。


人は、人生で辛いこと、悲しいことがあった時に、別の人を頼り、そこから一歩前進し成長を見せる、ということが多い。

人を全くの"他人"と断じ、頼らずに独りきりで生きる人もいるだろうが、そんな人はほんの一握りだろう。

僕はもちろん、多数派だ。

…だが、障害ができた。

相手へと、意図を十分に伝えれない。伝えた言葉は不十分で、後から"もっとこういったことを伝えたかったのに"と思い返すこともしばしばあるのだが、ちょっと時間を置くと忘れてしまう。

自分に責任があるのだが、最終的には"別にいっか"と楽観的な着地点を見つける自分に特別な感情を抱かなかったのは…忖度することのない自分に諦めていたからだろうか。

…いや。

彼女がいたからだ。

僕の心の片隅には、いつでも由衣がいてくれた。

いつでも"大丈夫!"とにっこり微笑みながら、僕を支えてくれていた。


だから、僕はどんなことがあっても、割り切って生きてこられた。

春には花見…夏には海…秋には紅葉…冬にはスキー。お見舞いに来た友達はもちろん、友達以外からもどこそこに遊びに行った、という話題は耳にした。

それを聞いても羨望を感じさせないのは、『僕には由衣がいるし』という、曖昧な"自信"が僕を支えていたのだろう。