…また、だ。


週一で通っている自立生活センター。そこで多くの人が集っていて、談笑している所に"ツッコミ所"を見つけた。

話はあまり聞いていなかったが、誰かが誰かに悪さをして、した方の人がしっぺ返しを食ったらしい。

その返しが見事だったみたいで、その現場を見ていた人の話に、場の空気が沸き立っていた。

そこで僕が『"倍返し"ですね』と言えてれば、場の盛り上がってる雰囲気も更に盛り上がった事だろう。

その時流行っていたドラマのセリフだ。

…だが、経験のある僕は"また"挟みたい口を閉ざし、黙ったままだった。

言っても、きっと"一回"じゃ伝わらない。


こういった経験は、過去に締観も含んで幾度となく訪れた。

あの時こう言っていれば、ああ言っていれば…そう思う事は何度も訪れる。

しかし、自分の言葉遣いが曖昧で、聞き返されてしまう事も多い僕は、"ギャグを言わない真面目な人"のレッテルが押されたままだった。


"僕は本当は面白い事も言えるんだ"


これは伝わってないからこそ思えるんだが、そう思い込んでいた僕は、不幸を背負った漫才師のような気になっていたんだろうと思う。
言葉の返しが本当に上手い。自分にだけ見えるレッテルを自分に貼って、意地汚くこっそりと笑う僕。
伝わらない事を隠れ蓑にして、自分の中での自分の評価だけどんどん上げていった。

"全く面白くないよ"

そう言ってくれる人が、誰もいなかった。

その変わり、懐かしい由衣の笑い声が聞こえたような気がした。