「…あぁ、本当に重要な要件ならまたかかってくるだろうから、いいよ」


しばらくして、ケータイの着信音が消えた。静寂が戻る。


「──…とりあえず拓人君、クッキー食べよっか」


由衣のその言葉は、わだかまりが残っておらず、すっきりとした印象があった。


「…そうだね。お願い」



──…二人は相も変わらず、"プラトニック"だ。

そんな状況を打破しようと、拓人はもがいていた。だが、もがけばもがくほど、泥沼に沈んで行ってしまう。


…やめた。

もがくのは、もうやめよう。

僕らは僕らのスピードがある。

僕らは僕ららしく、生きていければ。

それで、いいんじゃないか。


由衣の後ろ姿を見ながら、拓人はそう思った。