ピリリリリリ!


ピリリリリリ!



…拓人は金輪際、携帯電話を恨み続けるだろう。

拓人の高まっていた相手への気持ちは、その着信によって急降下した。

…まぁ、分かっていた。
そう、分かっていたんだ。

君たちには、まだキスすら早い、と男女の交際に手厳しいカミサマが言っておられるのだろう。

何か不手際がある、とは十分予測の範囲内だ。…範囲内、なんだ。


やっぱり項垂れて憔悴しきっている拓人だが、前でクスリと笑い声がしたのを察知した。

顔を上げると、由衣が我慢してたものを吐き出すように、大きく笑い出した。


「──あっははははっ!あははは!」


気でも違ったのか、と思うくらい笑う由衣に小首を傾げる拓人。


「はははっ──ごめんごめん。電話、いいの?」


着信は…予想通り中からだった。
空気読めない奴め…。拓人は確認だけするとすぐポケットにケータイを仕舞う。