「それもそーか。まぁチュー、あんまり中とベタベタくっついてんなよ?"あいつらはホモだ"って容疑拡散してんぞ」
たっちゃんとりゅーじは外で昼食を取るのだろう、たっちゃんが車のキーを指に引っ掛け、回しながら言った。
「え…マジ!?」
エントランスへ歩き出した二人の背中に拓人は問い掛けた。
りゅーじの肩が小刻みに揺れている。
「冗談だっつの。でもあんま金魚のフンしてっと、いずれそう思われても仕方ねーぞ」
たっちゃんは振り返るとキーの引っ掛かった人指し指で拓人を指して言った。
「あ、うん。ありがとう」
拓人の気の抜けた返答をどう受け取ったのかはわからないが、たっちゃんはため息をつくと、りゅーじと共に歩き出した。
二人の姿が消えると同時に、腹の虫が鳴り出した。
「…今日は豪勢にトンカツにしようか…いやまて、そう言えば中がミニカレー奢れって言ってたな…冗談だといいけど…」
一人ごちながら学食へ向かう拓人だった。
ちなみに「チュー」というあだ名には、拓人の苗字が榊原で、「榊原郁恵」の代表的な歌「夏のお嬢さん」でチューチュー言ってるとこがあるから「チュー」でいいんじゃね?というなんとも安易に決められた過去がある。最初は皆納得いってないのかあだ名であまり呼ばれる事もなかったが、今ではもうどうでも良くなって"チュー"が定着している。
ちなみに発案者は中である。

