「──…あ、今いきますー」


立ち上がり、玄関に向かう由衣。
その後ろ姿を悄然とした面持ちで見送る拓人。

タイミング悪すぎだろ!バカ!誰か知らないけどバカ!


「──ごめんごめん。ネットで買ったものが今届いて…」


小さなダンボール箱を手に戻ってきた由衣。その語調には照れが含まれていた。

だが、拓人の心は氷水を被ったように急速に冷えていき、視線を上げられなかった。

やっぱり一度やろうとしていた事を寸断されると、『もう一度』という気持ちは中々涌いてこないものだと思う。

アレだな。僕の心は大型トラックみたいだ。エンジンが暖まるのに凄い時間を擁す分、一度エンジンを切ってしまったらしばらくは冷えたまま──


「拓人君」


顔を上げると、酒が入ってるのかと思うくらい、真っ赤な顔の由衣がこちらを見ていた。