ドキドキ高鳴る心臓の鼓動は、自らのだろうか?それとも由衣のだろうか?

抱き合ったカタチの拓人らは、顔が真っ赤に火照ってきたのを自覚した(由衣はおそらく、だが)。


「…ごっ、ごめんっ!」


一瞬の間の後、由衣が慌てたように身体を起こす。


「へへ、滑っちゃった」


照れ隠しのためかそう発言する由衣の顔は、拓人と同じく真っ赤だった。


──その時、拓人は思い出す。

…いや、本当は今日ここに来た初めから思っていた。

"今日するべき事"を、邪悪な自分が再度囁く。


"草船のいかりを上げて、帆を張れ"


木霊するように拓人の耳に張り付くその言葉が、次の行動を決めていた。


「──…え?」