「…じゃあ、その前の"K"は?」
「んー…単なるイニシャルだったような…ホラ、"桑田"さんのK!桑田さん自己主張が激しいから。あーあとお客さんが料理食べて即倒しちゃう店ってことで"KO"!ノックアウト!ねぇこれスゴくない!?」


…やっぱり血筋は争えないんだな…と思いながら、苦笑して頷く拓人。
"Kオーシャン"が出来たのは40年以上前らしく、桑田さんは三代目店長らしい。創業時の事は詳しく知らないが、今では固定客も増え、細々とだがやっていけているみたいだ。

美味だったパスタを食べ終わった拓人たちは、流しに皿を持っていった後、一息つくようにこたつに入って寒さを訴える身体を暖めた。


「由衣バイトかなり長いよね。5年だっけ?」
「ううん、6年。高校一年生の頃からだよ」
「なっがいなー。店の雰囲気とか大分変わったでしょ?」
「そうでもないんだよ。そう言えばあたしが働き始めた頃の写真あるよ。見る?」


そういって立ち上がった由衣が、バランスを崩した。


「──あ、危ないっ!」


…拓人は気付かなかった。

助けようと向かう身体は、想像以上にその助けた相手の身体と密着する、という事を。