これから、と由衣も考えてくれているだろう、と拓人は自分勝手な思い込みで自己満足していると、一つ思い出した事があった。


『気付いてたんでしょ?』


拓人が告白した時、由衣はそうこぼした。

アレにはどういう意味が含まれていたのか。
拓人の本心を伺い知って言い放った言葉と違うだろうな…と牽制球を投げるが如く、恥ずかし紛れのトイレから帰還した由衣に尋ねてみた。


「…そんな事、今さら気になってたの?」


またも恥ずかしそうに聞いてくる由衣。拓人は小さく頷く。少し思い出す素振りを見せた由衣は、静かに切り出す。


「……確か…そう、あたしも好きだっていう事を分かってて、ある程度安心感もあって告白したのかな、って思ったの」


なんと!


…いや…でもまぁ、そうだよな。

よく考えてみれば当然だ。あのタイミングでの告白は、そう思われても仕方のない告白だった。それは認める。


…だが、違う。


拓人は、それは自分の中だけに留めておく事にしていた。

あの告白には、打算や狡猾さなんて含まれていない、殆ど真っ白な告白だった、と。由衣にはそういう記憶を留めておいて欲しい。真っ白な自分と、向き合っていて欲しい。

拓人は弁解するように由衣に説明した。