僕の考えは外に出る事なく、内でひっそりと成長していった。
笑顔で話しかけてくる人に、僕は上辺だけいい人を演じ返答しながら、『こいつ家でも十分話せてるんだろ』と成長を続けるひねくれた感情を、人畜無害な表情の裏に潜ませていた。
『"病気になって可哀想な僕"だから、会話をしてあげてるんだろ』
胸中に居座り続ける負のオーラは、もしかしたら外に漏れ出ていたかも知れない。
しかし、どうでもよかった。
人が僕に対しどのようなことを思い、どのようなことを考えてるか。
それを全く考える気がなかった。
──…人がどんな悩みを、どんな苦しみを抱えているか、も。
とにかく自分、自分だった。
「──榊原くん、今日はみんなでケーキ焼いてみたの。良かったら食べていって!」
自立生活センターに通い始めた僕が、ある日センター内に入ると、職員の人が笑顔で迎えてくれた。
「…あ゛り が と う゛」
そう言って、勧められた椅子に向かう。職員が椅子を引いてくれる。甘んじて座る僕。
この時は杖をついていたので、椅子の背もたれに杖を立て掛けておいた。

