時節の割には暖かな気候が、拓人らを包み込んでいた。

──由衣も、僕の事が好きだった。

予想はしていたが、実際に本人から口にされると、想像だにしていない言葉に聞こえた。


「…あたしも同じ。拓人君の、優しさに触れ続けて、気付いたら好きになってた」


赤らんだ顔のまま、由衣は続ける。


「誰にでも、優しい拓人君だけど…いつからか、わがままが出て来て、思うようになった。その優しさ、独占したい…って」


"優しいね"。
よく言われてきたが、"+α"を拓人は持っていなかった。


「…その優しさと毎日触れ合い、あたしの、今の気持ちまで昇華したんだと、そう思う」


優しさだけでは、恋はなりたないのかも知れない。

だが、相手がそれを認めた上で、それでも、自分と…


「…だから、もし良かったら、付き合って下さい」


由衣が真っ赤な顔を下げた。


「…い!いやいや!それはこっちからお願いしてるわけで…──」


慌てて由衣を止めようとするが、言いとどまる。

…そして、こう言った。


「……僕の方こそ、どうぞよろしくお願いします」



…比較的暖かな気候の、秋の1日。



拓人と由衣は、恋人同士になった。


暖かな気候が、祝福してくれているかのように


新たな恋人達を、等しく温暖に、優しい慈しみを持って包み込んでいた。