銀杏が風に揺られてさざめく。

たゆたう銀杏の落ち葉が、拓人の肩にのった。


「──…最初は、由衣を見ても特に何も感じなかった」


風に揺れる銀杏の木と拓人と由衣だけしか、今この世界には存在してないかのようだった。


「…でも夏休みに入って、毎日のようにバイト入って…」


最初はなんにも思わなかった由衣。変化の兆しが見えたのは、あの忙しかった夏休みにあった。


「忙しさもあったんだけど、僕はそれにより大きく感じるものがあることに、気が付いた」


一呼吸置いて、ドキドキ高鳴る心臓に身を任せるように、その言葉を発した。


「…由衣が、好き…ってことに」


一陣の風が吹いた…気がした。

拓人は顔を真っ赤に染めながらも、由衣を見つめ続けた。

おそらく、何を言われるのかを解っていただろう由衣だが、顔は拓人に負けず劣らず真っ赤だった。

拓人はこれが初めての告白な訳ではないが、告白はどんな形であれ、勇気がいるものだと、再確認する。