その日、拓人は就活が昼過ぎから夕方まであったが、大学の講義は午前中に終わっていたので、午後から少しだけ時間が空いていた。

由衣は逆に午前に就活があり、夕方からバイトが入っていた。

だから正午から少しの時間に二人の時間に余裕ができたが、拓人が移動する時間が勿体ないという事で、由衣が我が飯南大学に訪れる事となった。


「──拓人君、こんにちわ!」
「こんにちわ!なんか久々な感じするけど、先週会ってるね」


就活生は時間に追われている。
次から次へと合同説明会企業説明会があり、時間が立つスピードが矢のように感じる。

拓人と由衣が会うのも先週以来だったが、その間につもり積もった就活話に花が咲き、会わなかった時間が長かったんだなと錯覚したほど。

…だが、互いに意識している話題に触れると、口数が減っていった。

そう、由衣からのメールを受け取り、拓人はある程度、自信が付いたのだ。
…その自信が、次の一歩の出足を鈍らせていた。


「──…あの、拓人君、この前の、バイトでの、事なんだ…けど…」


由衣が切り出してくる。
緊張している証拠に、口調が訥々としてきた。


「…う、うん」


さぁ来たぞ。実感と共に拓人も緊張が走り始める。
…でも本当にこのままでいいのか?という疑問が、頭でちらついていた。


「あ、あの、あたし──」
「待った!!」


由衣が驚いた顔を向けてくる。

やっぱり、ここは自分から言わなくてはならない。

結果がどんなものであれ、受信していては自分の本当の気持ちを真っ先に伝えられない。

そう思い、拓人は静かに送信を始めた。