「…ま、頑張れよ!なんかあったら報告してくれ」
アリは拓人の反応に特別興味も無さそうにそう言って、酒の入ったコップをあおった。
…あのバイトを紹介してくれたのはアリだ。
つまりアリは、拓人と由衣のそもそもの始まりを作ってくれたのだ。
拓人が改めて礼を言おうとすると
「アリ~バトンタッチ…」
そう残し、畳に倒れ込むドゥミが見えた。
「え、俺!?無理無理無理無理!」
「DIOみたいだな。無駄無駄無駄無駄ァ!」
ターゲットがアリに変わり、礼を言いそびれた。また今度でいいか…と思っていると、ケータイのバイブがなった。
『from中村由衣
明日、会えないかな?』
淡白な10文字の言葉。
…最近GREEやらモバゲーというものが流行ってるが、拓人は使い方がわからないというのもあって、手を付けていない。だが、人と文章でやり取りするのは、メールがあればそれで十分だと思う。
なぜならメールだけで、こんなにも一喜一憂できるのだから!
「──アリ~サンキューなぁ~」
「オボボッオボッ!?なにがっ!?」
今や拓人がポンプを押していた。
喜びあり、感謝もあるアリに、お返しとして+3瓶のビールを、直接口の中に贈呈した。
「オボボボボッ!やめっオボボボボ!」
「アハハハハハ!アリ感謝してます!」
「ハハハ!…さて、次はチューな!」
笑いながら酒を次々とポンプに汲んでいると、たっちゃんが恐ろしい事を言った気がした。
「…え?ごめん、なんだってへぇぇぇ!?!?!?」
次のターゲットは拓人に変わったみたいだった。次から次へと流れ込んでくる酒に意識が飛びそうになるが、それをさっきのメールが押し留めてくれていた。

