あぁ…やっぱり。


思った。あぁ僕はやっぱり、由衣が好きなんだ、と。


ホタルの明滅を見続ける由衣の横顔を見て、改めて拓人はそう思った。
そして『今は恋愛どころじゃないから』という"言い訳"が、とても馬鹿らしく思えた。

就職活動で忙しいから、と逃げていただけだろう?

本当に伝えたい事を、先延ばしにしてただけだろう?

恋愛を、わざと遠ざけていただけだろう?

拓人の中で燻っていた疑問の霧。

その霧が晴れ渡っていく感覚。


「…由衣」


そう、伝えるのは、"今"なんだ。
細い棒を今一瞬だけ、太く、太く見せろ。


「ん?」


こっちを振り向く由衣。

顔だけこっちに向いてるのだと思っていただろう由衣は、拓人の改まった姿勢を見て、慌てるように自らの身体も拓人の方に向けた。