「…なんかいい企業あった?」
「う~ん…『これだ!』って思える企業に中々出会えないんだよね~」
「おんなじだよ!これからの説明会でそんな企業出てくるかも知れないけど…」
「ここに就職しちゃう?…なーんて」


二人は堰を切ったかのように話し出した。由衣が中と同じような事を言ってるのが可笑しかったし、由衣の抱えている悩みと拓人の悩みが似ている事で、皆同じような事で悩んでるんだな、という励みもあった。

後、久々に話していて、再確認した。今の自分の気持ちは本物だと。


「──あ、拓人君、見て見て!」


由衣がブラインド越しに窓の外を指差した。


「え?なに?」
「ほら、あれ…」


由衣に近寄って窓の外を見る。ふわっといい香りが漂った。香水かな?
外は真っ暗だったが、次第に目が慣れてきて、時たま小さく光る生物が見えた。


「…ホタル。こんな時期に珍しいね」


…みたい、と呟く由衣は何か自分の中で想像しているものがあって、それとホタルの明滅がそっくりだったんだろうなぁ、と拓人が思ってると、由衣が感慨深けに眺めながら続けた。


「時期的に外れてるでしょ。それでも光り続けるあのホタル、凄いなぁって思う。まわりの皆がいなくなっちゃっても、一匹でも輝きを失わないのは…」


ホントに凄いなぁ、と後半は一人言のように呟いていた。