「ありがとうございましたー!またのお越しをお待ちしてまーす!」


退店してゆくお客さんを笑顔で送り出し、店内に視線を戻す。

カウンター席に座るカップルのお客さんを残すのみとなった。男性がジョークでも言ったのか、女性が口に手を当てて笑っているのが目に入る。

時刻は間もなく23時になろうとしている。

今日も終わりか…とお客さんがいなくなったテーブルを拭いている由衣に視線を向けて、小さくため息をこぼした。


就活の時期に入ってから、拓人と由衣のシフトが被る事が少なくなった。だから今日みたいに二人共に出勤の日は珍しくなっていた。

これまでは毎日のように見ていた顔が、急激に見る回数が少なくなる。これからはこういう日が増えていくのだろうな、と思うようになった。


…その度に、切なく、苦しく感じる自分がいた。

この感情はなんだ?となった時に、必ず最終的に出る結論。


拓人は由衣に『恋』してる。

離れる時間が増えた事により、気付けた感情。