大ちゃんは就活に意欲的で、大勢いる就活生にうまく溶け込んで、様々なブースの企業を見て回っていた。
自分の"強い意志"が全くない拓人とは雲泥の差だった。
「…あまりにも人多いから、あんまり見れなかったよ」
「アホやな~こんな場こそ大事やろ!」
大ちゃんは人混みに気負わず廻れて、満足感が漂っていた。証拠に地元の関西弁が混じっている。
「あっちのブースに高校時代の友達おったし、ちょっと挨拶してくるわ!」
「わ、わかった。いってらっしゃ~い…」
拓人の呟きのような声は届いたのか届いてないのか、大ちゃんは手を振ってまた戦場へと消えていった。
「…就職活動した次の日は、大学休みになればいいのに…」
大勢いる就活生から視線を背けてから、今度は本当に呟いて、飲み終わった缶コーヒーをゴミ箱に投げ入れた。

