学食に向かう準備の整った中が、周りの少なくなった学生を見回してから、ニヒルな笑みを浮かべて言う。


「…寝てないよ。ボーッとしてただけ」
「分かるぜ…あの教授の声はなーんか催眠術にでも掛けられてるよーな感覚になんだよなー…まぁ俺は耐えたけど!つまり勝ったんだよ!」


拓人の話を全く聞こうともせず、「お前は負けたけどな!」と勝ち誇った表情の中。


「…いや、待ってくれよ。僕は考えてたんだ。講義を受けることによって眠気がある場合とない場合の不明瞭な事象について──」
「俺ミニカレーな!あ、お蝶さーん!」


拓人の言葉は道端の小石のように無視され、中は学年一のマドンナの元へと掛けていった。


それを横目で見ながら嘆息し、自分の教科書やノートをバッグに積め始めた。