その時、ちょうど遠くの方で友人と歩くアリが目に入った。

目が合うと、拓人は色々な感謝を込めて、投げキッスを送った。

アリはシラケたような表情で拓人を見た後、友人とピロティへと消えていった。


「…お前アリとなんかあったん?」


拓人の視線の先を目で追っていた中は、不思議そうに尋ねてきた。


「…まぁ、バイト先の斡旋とか…」
「え!?お前またバイト変えたん!?続かねぇヤツだなぁ~」


就職してもそんな"風の人"じゃやってけねぇぞ、と続ける中に、今度は大丈夫だ、とは伝えなかった。


それを口に出してしまったら、それが現実味を伴わないものになってしまう気がして。

今は…まだ。


夏の暑い日差しが、コンクリートの地面に反射し、ギラギラと輝くのが、その時はとても綺麗に見えた。