拓人の大学は夏休みの開始が遅く、8月の中盤からだ。
それでも人によっては10月初旬まで休みがあるので、ほぼ『二ヶ月ある夏休み』は変わらない。

この長い休みの期間中、する事が山積みな人も多いだろう。拓人も拓人で夏休みの過ごし方は決まっていた。


「チューテストどうだった?」


昼休み中に外のベンチでケータイをいじってると、中の声がした。

顔を上げると、中は例のニヒルな笑みを浮かべ、拓人の前に立っていた。


「…まぁいつも通り、可もなく不可もなく、って感じかな」
「お前は不可しかねぇだろ!それより最近付き合い悪くねぇ?彼女でもできた?」


確かにここ最近は中の誘いを断っていたのだ。中がそう疑問に思うのもわかる。


「…出来てるわけないじゃん。最近ホラ、金ピンチだからずっとバイト入れてるの」


その理由は正確でもあり、ある意味不正確でもあった。


「そりゃそうか。お前いつも金欠な感じすんな」


…おい。ほっとけ。
色々ツッコミを入れたかったが、面倒なので、暑苦しさを再び思い返すように、蝉の声に耳を傾けた。