「拓人君、三番テーブル片しといてー!」
「はいよー」


拓人と由衣は今やこの喫茶店の名コンビとなっていた。
まるで阿吽の呼吸を合わすつ◯さ君とみ◯き君のように。

大学の夏休みが間近に迫って来ている今、テストも終わった拓人はほぼ毎日バイトを入れていた。

まだ入って一月と立っていない新参者だが、常連客の皆さんは暖かく迎えてくれていた。

当初、覚束ない足取りで店内を動き回る拓人は、お客さんの服に運んでいたものをぶちまけてしまったりしてたが、お客さんは笑って許してくれた。

慣れてない事を、助けてくれてるように見えたお客さんは、神様仏様に思えた。


…なにより──


「拓人君、レジお願ーい!」
「おっけー」
「──なんか二人共相性いいね~!もしかして付き合ってんの~?」


拓人達を見てそうからかってくるお客さんもいるのだ。


「いえいえ付き合ってないですよ~!…それよりお客さんもう一杯どうです?」


それに対し、少しの恥じらいを見せて、由衣は上司にお猪口をつぐその部下みたいに言う。その姿を見て、顔が熱くなっている自分自身にも気付く。

…狭い店内に感謝した。