「あ、ありがとうございます!!そちらがよろしければ今夜からでも構いません!」
「ははは!威勢がいいねぇ!でもまだ制服ないからそんなに急がなくてもいいよ。あ、紹介しといた方がいいね。おーい、ゆいー」
桑田さんが厨房に呼び掛けると「はーい」とさっきの声が聞こえ、パタパタとこちらに走りよってくる女の子の姿があった。
「この子が榊原君の同僚になる…自分でさせるか…ホラ」
そう言って桑田さんは女の子の背中をポンと叩いた。女の子は少しの恥じらいを見せたが、訥々と語りだした。
「…中村 由衣(なかむら ゆい)、です。大学三年生、です。よろしくお願いします」
丁寧にお辞儀をする中村さん。
その仕草に、小さな花が咲いたような華やかさがあった。
「あ、榊原 拓人です。こちらこそ、よろしくお願いします」
拓人もお辞儀を返す。頭を下げると同時に思い出す事があった。
(…ゆい?思ったら前の合コンの子も"ゆい"って名前だったような…)
一抹の不安と共に、拓人の新たなバイト生活が始まったのだった

