「いいから帰るぞ!ほら、中ら待ってんぞ!」
拓人らの道の先には中と少々酔いぎみのリュウイチが待っていた。
中は酒に強い。酔ってる所を見たことがない。…まぁそれが女の子を家に持ち帰れる理由にもなっているのかも知れないが。
「チュー相変わらず弱ぇな!今日のデキが今一つだったか?」
中特有のニヒルな笑み。女の子の前でそんな顔したらひかれるだろうなぁ…と思った。
「まぁとりあえず帰んべ!明日も一限から講義だ!」
切り替えの早い性格の中は、そう残して歩き出す。「あ、今日か」と真夜中の空を見上げて続けた。
「…中今日全員分のアドゲットしてたぜ。抜け目ねぇよな」
揚々と帰りの歩を進める中を見ながら、カズヒロが僕にだけ聞こえるような声で言った。
「…まぁ、中だしなぁ…」
今日の夜空は晴れ渡り、夜風に乗って虫の小さな囁きが聞こえる。満月に照らされ、肩を支えられ歩く拓人たちの月影が、きらびやかに道路に映し出されていた。

