──長く独りを経験している僕は、自分の感情のコントロールに長けていた。

どんな良い事があっても、過度に期待は抱かない。
嬉しい事、悲しい事で起こる感情の起伏は、自身に変化を来さないように努めていた。
冷静な"第二の自分"の存在を、自分の中では確立させていた──

…そんな自分の中にあった"尊大な美意識"は、"格好つけた虚構"だった。

わかっているのに、期待する。そんな事はあり得ないと内で叫ぶ自分に蓋をする。気丈な自分に酔っているだけだと気付くのは、いつも事後。


僕は、なんにもできない。

そんな事、わかってたはずなのに。

それを一時だけでも忘れさせてくれたのは、人だった。

新しい職場で、新しい人たちとの繋がりを経て、新しい自己を築いていく。

そんな一般人のような生活に、懐かしさと憧れを抱いていた僕は、すぐさま飛び乗る。同じ障害者という安堵感からか、僕の中にある"ひねくれた感情"はすぐに姿を隠す。

そこで生まれる、人と人の関係。決して1人では辿り着けない領域に、職場の仲間達は軽々と僕を運ぶ。

人間関係の素晴らしさを、改めて学ぶ。人は1人じゃ生きていけない、そんな道徳心が僕を成長させてくれる。

就労支援の利用者が集まる施設。障害を負って、人生に悲観してるのは、自分だけじゃない。回りにも苦しんでいる人がいる。そんな前向きな気持ちにさせてくれる。

…しかし、それ をまた思い出させたのもまた、"人"だった。