"──何も、ない"
変わってきたと感じる自分を突き放す無心。
『何かが変わってきている』
『悲観は過去形になった』
前向きな自分だった。
前進する事しか頭になかった。
前にある光が本物だと信じていた。
周りの人がどんな反応を示しても、僕は付いていける。話がわからずとも笑っていればいい。
空想で軽く感じていた身体。
見つめている世界が全て本物だと思った。
光が造り出す影に気付かなかった。
光あるところには必ず闇も同居する。分かっていたはずなのに。
僕が見つめていた光の部分。
圧倒的に闇が多いのに、少ない光にすがって生きてきた僕。
闇に落ちた時、"あぁやっぱり"と思う気持ちが強い。
だが、今回は今までとは違っていた。
今までリハビリ一色で生きてきた。
リハビリ中に声を掛けて来てくれる人、それが同じ利用者だろうと職員だろうと等しくありがたかった。
ほとんど会話になってない内容でもよかった。"普通に喋る"のが困難な僕に話し掛けて来てくれる人に、最初は鬱陶しさを抱いていたが、徐々に会話で生まれる意義に気付けた僕は、その重要性を理解していった。
だが、他人はあくまで他人だった。僕の理解力が上がったと自惚れていた。
…それでも。
そんな考えは、今まで芽もみせなかった。
変化の少ない毎日に訪れる些細な希望と絶望。対極に存在する、決して大きくない感情はだんだん小さくなり、比例する僕の成長と共にいた。

