右半身麻痺に言語障害をも背負って、いいことなんて一つもない、そう思っていた自分の変化は、正に僥倖だった。
確かにマイナス点ばかりだ。
どんどん卑屈になっていく自分の気持ち。もがけば相手の『意味不明』と感じてるであろう表情が伺える。その内泥沼化した僕の内心は、沈むことも少なければ、浮き上がる事もなかった。
…だが、そんな中からでも、一筋の糸を掴んだ感覚を持てた。
今まで"下"を見てばかりだった自分の視線が、上がっていった。
"前を向いて生きよう"という、上昇思考に変わっていく。
"上"へと視線を上げれた事は、まだ見ぬ希望へと繋がるのではないだろうか。
この自分の変化こそ、明日へと繋がる道標なのでは。
大切なものは、きっとすぐそこにあった。
今まで気付かなかった。
いや、気付けなかった。
目を逸らしていた。
前に進む事を拒んでいた。
きっと、恐れてた。
全てを失った自分の、喪失感。
前を向く事のない、悲愴感。
そんなものばかりが、僕の回りをぐるぐると漂っていた。
いつしか僕の拵えた塔は、天にも登るほどの高さだと、錯覚していた。
存在しない"バベルの塔"は…僕の濁り固まった虚構の自信は、綺麗にその姿を消していた。
変化の兆しは、近くにあった。
それが、少しだけだが姿、形がはっきりと目に写った
そうだ。
…僕は──
──また、勘違いしていた。

