「ちょっ…待っ…」
「これは…受けとれない。ごめんね」
由衣が、差し出して来たもの。
拓人が考えに考えて初めて買った"残るもの"。そういうのは由衣は好きじゃない事は知っていた。
知っていたが、今日は特別な日にしたい、という思いから、思い切って買ったブレスレット。
それが今は、手首に掛けられる事なく、由衣から拓人の手に渡された。
それから促されるまま荷物をまとめ、追い出されるように玄関へ。
「──…ごめん。じゃあ」
拓人は何も言えないまま、ドアは虚しく閉じた。
──分かっていた。本当は。
由衣が怒る理由も追い出される理由も。自分の嫌らしい性格が、イヤになる。あくまで自分は何もわからない"被害者"を装おうとしていた。そんな時でも保身を考える自分は、汚い。
だけど、由衣の主張に反撃できる武器を、拓人は持ち合わせていなかった。だから黙っている事しかできなかった。なにより、反撃は裏目に出るだろうとの予想が、拓人の心に澱のようにあったのだ。
そう、保身だ。
腕時計に目を落とすと、時計は丁度0時を回った所だった。
20年とちょっと生きてきて初めて迎えた、最悪のクリスマスだった。

