「……あたしは、あたし達の距離感が気に入ってた。何も触れてこない拓人君に安心してた。"大学生の内は清い付き合いをしよう"って、あたしの自分の中での決意が、拓人君にも伝わってるんだって、そう思ってた」
そんな古臭い少女マンガ染みた発想、考えてるワケないだろ。
そんな言葉が、喉元で消滅したのは、俯く由衣から少しだけ見えた、赤い頬が原因だった。
──…泣いてる?
「……」
「…でも、違ってたみたいだね…」
顔を上げた由衣は泣いてはいなかった。
…が、悲愴感に満ちていて…
黒目が揺れていて…
…心が、泣いているみたいだった。
「…いや──」
「──今日はもう、帰って」
ベッドから降りて、拓人を見つめてそういう由衣。
「…え」
「ちょっと一人で考えたくて。ごめん拓人君、今日は帰って」
拓人の荷物をまとめ始める由衣。
話に付いていけてないからその行動の意味が分からない、と言う"言い訳"を即座に拵え、焦ったように由衣を止めようとする拓人。

