そして、ゆっくりとお互いの身体を離す。が、腕はそのまま。お互いを至近距離で見つめあう状態。


よし、と心の中で気合いを込め、顔を近付けると、由衣は瞳を閉じた。


拓人も同じように目を閉じ、ゆっくりと、自分の唇を、由衣の唇に重ねた。


その瞬間、由衣との思い出がブワッと、頭の中で湧き上がった。

そのどれもが懐かしく、このまま時が止まってしまえばいいと、本気でそう思った。


シャンパンのアルコールが残ってて、少し甘く感じられる由衣の唇。
瞳を閉じながら、自分の唇も同じような味かな、と考える程の、長い接吻だった。


…しかし、拓人は思い出す。

実は、来たときからあった。

今日、やるべき事。


やっぱり時間は、止まって欲しくない。

そう思った拓人は、唇を離し、由衣の身体をゆっくりと脇にあるベッドに誘導した。
拓人が押し倒したような形になった後、恥ずかしいだろうからと、電気のリモコンを持って、消そうとすると


「──今までもそうしてきたの?」


地の底から聞こえてきたような、低い声がした。それを発したのが誰なのか一瞬分からなかったが、拓人を見つめる鋭い視線で、目の前の女の人が発したものだとわかる。だが思考が交錯する。本当に由衣の声だったのか、自信がないほど、低く、そして暗い声だった。