どうやらこの夢はしばらくは覚めないらしい。


気が付けば、左右に鉄の棒がある体操の平行棒のような物の中で、僕は歩いていた。目の前にある等身大の鏡が、体操とは異なっている事を教えてくれた。


なぜかいつも隣にはおじいちゃんがいた。僕が車椅子で移動する時や、ベッドに横たわる時、おじいちゃんの姿が側にあった。


とにかく世界がぼやけて見えた。基本的に眠っている毎日で、夢が様々なものを見せた。どこか祭りの会場で、そこら中に提灯がかかっている賑やかな所にいたり、静かな螺旋階段を足を使わずに降りて行く感覚の中、その螺旋階段の回りにはベッドで寝ている人達の姿があったり。

夢は基本、訳のわからないものばかりだが、いつもと違うのは、そこに自分の姿が、『いつもの自分』が映ってない事。


ベッドで寝ているとどこかから急に奇声が上がったり、朦朧とした意識の中けたたましいアラームの音と慌てた様子の看護師達がいたり…
断片的な記憶しかない。


そんな中『いつもの自分』がその場に居ない事を不思議に思っていた。


自分はなぜ車椅子に乗っているのか、なぜ『看護師』だと分かる人が目に映るのか。


そんな通常当たり前に思う疑問が次々と沸いたが、なぜか僕にはその『当たり前』が消失してしまったみたいで、何を考えていたかすぐ忘れていた。