「お、それ俺らもだ」
「あ、そうなの」
「そうなのってお前また中に任せっきり!?いいのか他力本願で!いいか他力本願じゃ自分の意思が全く──」
うるさいので耳からシャットアウトした。"他力本願"というフレーズが気に入ったのか、メガネがその単語は何回も繰り返していたのだけ聞こえてきた。
「──なわけだからな、お前もうちょい自分ってものを──」
「要は事前にしっかりチェックって事だろ?」
「はっじっめってっの…」
「「「アコム♪」」」
「聞けよっ!」
…自分は幸せだったんだ。
"黄金時代が現代であったためしがない"
そんな諺どおり、その時の拓人は気付けなかった。
一般人からすれば普通の日常だった。だが、拓人にとってはまさに黄金時代だった。
どれだけこの瞬間が幸福だったか、その時の拓人は気にも止めてなかった。
この瞬間瞬間が限られたものであることを──
拓人は気付く由もなかった。

