"今があってよかった"
リハビリ施設で僕にそう語った、同じく半身麻痺、言語障害をもつおじさんがいた。
自分が病気になってしまった当初は落ち込んで、『なんで自分が…』と思った。だが、自分には乗り越えられる壁だと、神様がそう判断した。だから生かされた。今は前向きに生きている。障害を負ってしまった事をただの不幸だと捉え落ち込み続けるより、"今"があってよかった、と考え方を変えるだけで、生き続けるのが楽しくなる。
その場ではふんふん、なるほど、と頷いて、おじさんの自尊心を傷付けないよう聞いていた僕。
おじさんが話を終え去った後、ため息混じりに思った。
バカじゃねぇ?
こんな動き方でそんな風に思える訳がない。こんな喋り方でそんな風に思える訳がない。そっちもそれは同じだろうが、何より病気になった年齢が段違いなんだよ。"今から"って時に病気になって、それがよかった事、なんて後で思い返せる訳ないだろ。
これが僕の正直な感想。
普通に歩けてたら僕はもっと、みんなと色々なところへ出掛けれていたハズだ。普通に喋れていたら今なんかよりもっと沢山の人と交流を持ててたハズだ。
…『多分、おそらく』が止められない。
こう考える事で自我を保っていた、と言っても過言ではない。
病気になったばかりの頃、今があってよかったと思う、などと殊勝な事を抜かしていたが、今は180度考え方が変わった。
本来の自分に返った。
この病気になってから、何事もマイナス点からでしか見れない自分に。
心の内で唾棄ばかりしてる自分に。

