「…そういや二人とも、なんで手ぶらなんだ?飯は?」
中の質問に淡々とメガネが答える。
「俺ら二限空いてたから外で食ってきたんよ。ジョナって来た」
メガネの発する奇怪な単語、それはこの大学の近場にあるチェーンレストラン『ジョナンサン』の略だ。
値段が学生向けに設定してあるのかお手頃で、空いてる時間に利用する学生も多い。
近場、といっても車で5~10分は掛かってしまうのが、僻地にあるこの大学の難点の一つだ。
「…そういえばさっきたっちゃんとりゅーじも出てったな。ジョナるつもりかな」
「最近の俺のオススメは"チキン南蛮定食"!旨い上に値段もリーズナブル!」
「いや聞いてないし」
「三限何取ってんだ?」
中はペットボトルを自分の鞄から取り出して飲んでいたドゥミに聞いた。
「あぁ~えとっつぁんの講義だよ。法学演習」
えとっつぁんの愛称で親しまれるのはドゥミとメガネの所属するゼミの先生、江渡先生だ。

