翌日。

数少なくなった講義に出るため、拓人は講義が始まる前に席をキープして座っていた。


「おぉ~チュー!早ぇな」


欠伸を噛み殺しながら、同じ講義を受ける中がやって来た。

こういう時、任せっきりは良かった、と思う。就活の時はマイナスイメージしかなかったが。


「…あぁ。今日は早く目覚めたからね」
「そう」


咄嗟についた嘘だったが、中はどうでも良さそうに、結局出てきた欠伸を素直に受け入れていた。


「…中。サンキューな」


"ごめん"より"ありがとう"の方が相手の心に響きやすい、と知った情報を、そのまま実践した。

中の欠伸に紛れるように言った拓人の感謝の言葉は、正確に伝わったかどうか分からない。

…だが、これでいいと思った。

この時期の拓人たちの謝罪は、ものにはよるが、とても軽い物が多く、それでも相手には十分伝わっている。


「…ん?なんか言ったか?まぁとりあえずよ、来週にまた合コ」
「遠慮しとくよ」


…と、思う。

即答で断る拓人だが、コイツは変わらないな、と自然と込み上げてくる笑みを押し殺し、一限目を受けた。