謝罪と共に頭を下げようと思ったが、それをすると"自分が悪かった"と認めたようなものだ。

だから、拓人は真摯な眼差しを、自らの潔白を訴えるだけにした。

次に頭に浮かんだのは、諸悪の権化、中だった。


「…最初は男だけで飲み会するって話だったんだ。ホラ、先週警察官の試験僕受けに行ってたよね?終わった後、その面子だけで飲みに行くって話だったハズなんだ…」


そこから切り出す"言い訳"を、由衣はずっと黙って聞いてくれていた。醜いアヒルを由衣は嫌悪する事なく受け入れていた。

ちなみに、中の事は大分前に由衣に話してあって、警察官志望という事も由衣は既知だった。


話し終えた拓人は由衣の顔を確認するように見た。

なんらかの感情は抱いているだろうが、それがどういったものか、は分からない。そんな表情。

水上花火の音とそれに伴う歓声が聞こえる。同じ場所にいるのに、そことは隔てられた空間にいるような感覚がする。


「──…中が、憎いよ」


拓人のこぼした恨みがましい言葉。悪いのは全て中だ、と責任を全て擦り付ける気持ちがあった。汚い感情だったが、そんな思いも大きく響く花火の音がかき消してくれた。


「──…寂しかったんじゃない?」