「誰がそんな事言った?」


ピキッと血管が浮き出る。


「言ってたじゃん!今日男だけで飲むから安心しろって!」


声が大きくなるが、更に大きな回りの喧騒によって書き消される。


「…勘違いしてるな。俺が言ったのは『この面子"で"飲みに行こう』だ。"だけ"じゃねぇ。そこから人が増えても何の問題もねぇだろ」


…言い返せない。
言葉に詰まってる時に、コイツやっぱり全然酔ってないと、悠然と話す中を見て思った。

ちくしょう…


「中ー!ちょっとー!」


その時、名前を知らない男が中を手招きして呼んだ。


「おお!今行くー!…つー訳だチュー。まぁ楽しんでけよ!」


中はそう残し、背中を見せ席を立ってゆく。


…ちくしょう!


『…もういい。帰る!』


と一般人なら憤って帰れるのかも知れないが、気の小さい拓人はその場に黙って居座り、相変わらずの草舟精神を発揮する事しか出来なかった。