「カップルっぽいんだよこれがまた!完全に付き合ってる男女をイメージした書き割りだったから、チューと寺井がやる事でキモさ倍増!」
そんな事あったのかー、との声。
誰の声かはわからなかった。
…あの頃の記憶は、良き思い出として何度もイメージを繰り返した。僕が一番好きな"記憶"だから。毎回繰り返す記憶の断片は、変わる事なく一定に僕を楽しませた。あの頃の記憶には揺るぎない自信があるハズだった。
だが、途端に自信がなくなった。
自分一人で築き上げた城は、欠陥ばかりの今にも倒潰しそうな泥城だったような気持ちが沸き上がった。
蒙昧な自分を改めて気付かされた感覚。
僕自身が思い返す過去は正しい?
僕の記憶で何が正解?
僕の記憶で何が誤り?
場では懐かしい過去の話に花を咲かせてる町吉。本来ならばそういう話しかわからない僕は、嬉々として聞き入る。だが僕は、自分との相談に耽っていた。
久々に友達が来てくれたというのに、それから僕は暗澹たる思いを胸に黙りを決め込んでいた。