日々リハビリを続け、その後になにがしたいのか、という疑問は僕の中に判で押されたようにあったのだが、僕自身では不文律だった。
答えから逃げていた、というのが正しいかも知れない。
大病を患い、なんとか生き長らえたのだから、それに報いるような事をしなければならない。
心が発するその微細な声は、僕には届かなかった。
必死に逃げていたから。
現実と向き合いたくなかった。過去に戻ってやり直したいと思った。あの時に戻れたなら…そんな夢想を繰り返していた。
その、逃げ惑う背景には、あの子がいた。
『安心して…拓人君なら大丈夫』
『今の状態を続けるのも、一つの手だよ』
『みんなはみんな。拓人君は拓人君なりの生き方があるよ』
僕の、他人から蔑まれるような人生観は、あの子の言葉によって支えられ、立っていた。
目標のない薄っぺらい人生を、あの子が横で支えてくれていたから、僕は何度も倒れそうになりながらも、立っていられた。

