花見のシーズンも終わり、次はGWが待ち構えている。
もう桜は散ってしまったが、変わりに八重桜を見に行こう、と拓人と由衣は少し季節のズレた花見をしに出掛けた。
人混みが苦手な拓人と由衣は、時期をわざと外して避ける事が多かった。
「──わぁ、拓人君、見て見て!こんなに満開の八重桜、あたし初めて見た!キレー!」
子供のように目を輝かせる由衣。
そんな由衣を見てると、悪戯心がわいてきた。
「…そう言えばなんで『八重桜』って言うか、知ってる?」
興奮している犬みたいに、キラキラ輝いた顔で由衣がこちらを向く。
「え、知らない!どうして?」
頭の中で瞬時に企てた妄想を、聞かせてあげる。

