「なんで?」


拓人の言い訳に、きょとんとした顔で由衣が聞いてきた。


「…え?」
「なんで謝るの?いいじゃないこれ!地元感満載で良い味出てるよ!」


由衣の嬉しそうな声。そこに他意は感じられない。救われた感が出て来た。
それに、と由衣が続ける。


「そんな事言ったら地元の人に怒られるよ?」


はっとする。由衣に対してある申し訳なさ、それはつまり地元の人への侮辱に繋がるのだ、と気付いた。


「…あたしは、拓人君が買ってきてくれたって事で、それだけで十分だよ」


ありがとう、と少しの照れもある由衣が小さな声で言った。


あぁ…僕は…

僕は…やっぱり、由衣が好きだ。


「…由衣」
「ん?」


由衣の瞳を見つめる。


「…ゆいっ──」
ピーーーーーー!


拓人の声はキッチンから出たけたたましい音に書き消された。


「あ、お湯沸いたみたい。コーヒー入れたげるね」


そう言いつつ、立ち上がる由衣を、拓人は呼び止めれなかった。


(…相も変わらず、ヘタレだな、僕は…)


行動に移る拓人を止めた音に苛立つよりも、安心している気持ちの方が大きい自分に落胆しながら、由衣の持ってきてくれるコーヒーを待ってる拓人だった。