ソメイヨシノが散って、今度は八重桜が見頃を迎える頃。

拓人はお土産持参の下、由衣の宅を訪れていた。

拓人が旅行に行った事は由衣にも伝えていて、おそらくお土産を期待してるんだろーな、と無粋な予想をしていたが、由衣には拓人がエキセントリップしていた事は、忘れ去られているみたいで、開口一番
「何嫌らしい顔してるの?」
と、純粋無垢に尋ねられただけだった。


「お土産だよ!僕旅行行ってたろ?そのお土産!なんだよ"嫌らしい顔"って!」


三和土で靴を脱いで、お邪魔しますの次の言葉がこれだとは思わなかった。


「あぁそう言えばそうだったね!ごめんごめん!そしてありがとう!」


由衣の何の害意もない様子を見て、拓人は買ってきたものを思い出し、躊躇った。