「これチューっぽい!ちょっと顔出してみて!」
「僕っぽいってどうゆう意味?まぁやってみるけど…」
「アハハハハハ!あぁもういいや」
「おい」


午前五時。某県高速道SA。

そこにあった書き割りで、試しに顔を出してみた拓人だが、一瞬の笑いしか誘えなかった。

一緒にいるのは同じ大学の、寺井、黒岩さん、町吉の三人。

日程ががら空きだった拓人を、この三人がたまたま誘ってくれたのだった。

いつもと違う面子は、新鮮さがあって心地好い。

朝から大型レンタカーで二泊三日のドライブ。そういう経験はいつもの面子としかほとんどなかった。
だからSAの自販機でコーヒーを買い、朝の空気とほのかな缶コーヒーの薫りと共に、いつもの面子とは異なる新鮮さも味わっている所に、寺井から声が掛かったのだ。


「──まぁまぁ、一応写メっとくから、チューそのままで!」


黒岩さんがそう言う。
仏頂面の拓人の顔に、勇ましい武者の書き割りはどうみても合ってなかった。